玉造小劇店 配給芝居vol.16「ひとり、独りの遊戯」 [芝居]
「さいとうひかる」という人物の一代記を描く芝居です。
主人公は戦前、日本人と朝鮮人の間に生まれ、13歳までは女性だったという人物。大陸で身を守るために“男”となり、日本帰国後はヤクザ稼業に手を染める-という型破りの生涯を死の床で、回想形式でたどっていきます。
さいとうひかるが生まれるところからこの芝居は始まります。
この出産でひかるの母は亡くなってしまいます。満州の親戚の家に預けられ、馬賊に引き取られて育ち、満州から日本に戻る途中、役者をやっているという男から「男の格好をしろ」と言われ、ひかるは男の子として日本に戻ってきます。
ひかると、さとるの兄弟は、大阪でヤクザになろうとしています。
そこに新入りとしてテツが入ってきて、物語が動き始めます。
女性であるひかるは、しかし、完全に男として大阪のヤクザの世界にどっぷりはまっています。ケンカも強いし、頭もいい。兄のさとるは気の優しい男で、ひかる曰く「この世界には向いていない」といわれます。
ひかるは経営の才能まで発揮しつつ社内で出世し、さとるは泣き落としで借金の取り立てをするという才能を発揮していたところ、預かった拳銃を、「ひかるに惚れた」振りをした共産主義の女子大生とその仲間達に持って行かれそうになります。彼女の足を撃って動けなくし、そして、街中に向かって拳銃を撃ちまくる。そして、自ら獄中に入ることを望みます。
そして、13年の刑期を終えて、女として出てきたひかるにテツがプロポーズして、幕です。
この芝居では、登場人物が人形で出てくる場面があるのですが、必要性があるのかなと感じました。
キャストが11人で43名の登場人物が出てくるので、頭が混乱しそうでした。
座長のゑふさんは、「悲劇をいかにコメディーにするか」と語ってはりましたが、もうちょっと笑いが欲しかったです。
大阪公演は、この日が千秋楽でしたすぐに移動して、7月1日から東京公演と。役者さんも心持ち焦り気味に見えました。
ほぼ満員の状態で、東京での公演も入りがええなと願います。
玉造小劇店 配給芝居vol.13「洋服解体新書」 [芝居]
13年ぶりに復活する「近鉄アート館」のオープニングシリーズの第二弾として上演されます。
小劇団にとって小屋が一つでも増えるのはごっつうええことです。一時期、小屋がどんどんと閉鎖されていった時期があっただけに、復活は喜ばしいことです。
舞台を囲むように、3方向に客席が設けられていて、とっても見やすいです。
客の入りは9割くらい、そのうち女性客が9割近いです。
芝居は、だいたい女性客が多いですが、今日はとくにそうでした。
洋服をテーマにした芝居なので、女性受けするのでしょうか。
2004年に上演された「ちゃちゃちゃ」をベースに、わかぎゑふさんが新たに書き下ろした日本で初めて洋服を縫った職人たちの物語です。「ちゃちゃちゃ」のその後の日本洋服界をイメージしたお話になっています。
東京で11日間、大阪で4日間開催された千秋楽です。
東京では2日間が大雪だったそうで大変だったようです。
明治23年、洋服を着る側の人間と、作る側の人間の住む世界が全く違っていた、そんな時代。
仕立て職人は、憧れの職業でした。
それぞれに置かれた境遇で洋服作りに情熱を燃やす人々、そして洋服を着ることに魅了された人々…。
舞台は東京で、関西弁と江戸弁が混じり合うさまは楽しいです。
店主、琴葉の喋る玄人言葉、明治の男の標準語、神田生まれの職人が喋る江戸弁などなど、色も匂いも異なる言葉が耳に心地いいです。
洋行を間近に控えた皇族が洋装店に皮のコートを発注し、店主らが皮の生地と職人集めに奔走するところから、物語が一気に加速します。
ある特異な才能を持つ少女、マメ。
彼女に皮の生地の職人としての白羽の矢が立ちます。
無事、皮のコートは出来たのですが、ご謹製の皮と使ったとゆうことで関係者は投獄。
マメは、京都の公家の世話をしてきた「鬼」の一族でした。
その長が、投獄されたマメの命をあきらめると言った時、芸者上がりの洋装店の店主が、聞こえないね!と啖呵を切って反論します。それに心動かされた職人たちが、皆で協力して難題を解決します。
この場面には涙が出ました。
明治時代の皮革製品に対する穢れの意識、男尊女卑、階級差別など・・・。
時代が平成になっても残っているものがあります。
目をそらすことの出来ない真実に向かっていった人達がいて、少しでも前に進んでいっていると信じます。
そこには力強さと爽やかさを感じました。
ラックシステム「お祝い」 [芝居]
前回と小屋が変わって、今回の小屋はABCホールです。
舞台は、
昭和12年、大阪船場にある「岡崎商店」。
布団の問屋の分家で、分家したばかりの若旦那、
岡崎陽介(20才)が経営している。
性格は生一本で、大学では考古学を学んでいた陽介。
ある日、陽介の妹である晴香が学校で初潮を迎えたとの噂を、
女中のお絹が聞きつけて来て、
男ばかりの店員たちは晴香の帰りをどう迎えるかで、てんてこ舞い。
お赤飯や紅白饅頭の準備に走り回っていると、
そこへ陽介の友人の島村優平が、
晴香が交通事故に遭って亡くなったと知らせに飛び込んでくる。
その日以来、陽介がお赤飯を食べることはなくなった・・・。
晴香が事故にあったのは、初潮になったことを男の子たちにからかわれて
道路に飛び出したせいだったと知った陽介は、
生理への偏見を無くすため、布団屋をたたみ、生理用品の開発に奔走する。
生一本な性格で、研究熱心なあまり近所からは、
「変人倶楽部」と陰口を言われながらも研究・開発を進めていく。
そんな中、遊び人である優平の紹介で、陽介は亜紀という女郎と知り合う。
優平の猛反対を押し切って、陽介は亜紀と結婚。
苦労を重ね開発した生理用品、婦人団体へのプレゼンテーションも大成功に終わり、
さあ、これから!という時に、日本が戦争に突入。
商売は頓挫してしまう。
やがて戦争が終わり、GHQの助力もあり、商売は順調に。
そして亜紀との間に出来た子供は、
「晴香」と名付けられ、十四歳に成長している。
仕事から帰ってきた陽介は亜紀にこう告げられる。
「お父さん、今日晩ご飯、お赤飯やよ。」と。
冒頭から泣かされ、戦争の悲惨さに怒り、
そして、ラックシステムらしく笑いも随所にちりばめられいます。
「お祝い」は、今回で4回目の公演となります。
私は初見でしたが、また見てみたいと思うような、
内容の濃いお芝居でした。
芝居のラストが、大阪と東京で違うそうです。
両方を見られないのは残念です。
日替わりゲストは、この日は、
「ダイナマイトしゃかりきサーカス」でした。
素敵な歌声で素晴らしかったです。
ラックシステム「お弔い」 [芝居]
今回の小屋は、梅田のHEP HALLです。
この小屋には初めて来ましたが、近代的な小屋で
可もなく不可もなくといった小屋です。
舞台は、
昭和30年、戦後から10年が経った大阪です。
とある会社で経理を勤めていた、おばちゃん(赤坂美智)が亡くなって、
その人の顔を知らない人々が集まって家に残った物を整理しようとするのですが、
慎ましい生活をしていたらしいのに意外な遺産が見つかり・・・。
その遺産を巡って、
さまざまな人の思惑と駆引きが、繰り広げられます。
自分のものにしようとする、詐欺師達のお話が面白かったです。
戦後から10年が経って、
戦争の影は薄くなってきていますが、まだ戦争の影を引きずったところもあり、
そんなエピソードには、ぐっとくるものがありました。
この作品のモチーフになっているのは、
アメリカのアウトサイダーアーティスト、ヘンリー・ダーガーの一生です。
アウトサイダー・アートもヘンリー・ダーガーも、初めて聞きました。
昭和30年には、ヘンリー・ダーガーは存命していましたので、
不思議な感じがします。
今回のお芝居は長台詞が多く、
今までと違った役者の面も見られて楽しめました。
リリパットアーミーⅡ 「大阪芝居~ウエディング編~」 [芝居]
5月22日から6月22日まで「中之島演劇祭」と銘打って、8つの劇団が参加していますが、
そのトリをとるのが、リリパットアーミーⅡ 「大阪芝居~ウエディング編~」です。
6月20日に観に行ってきました。
新社屋の一角にある、新・ABCホールでの公演です。
堂島川があって、新社屋も木の階段を使っていたり、雰囲気のいい空間です。
中に入ると、近代的で質素な感じですが、
座席は割とゆったりとしていて、ひな檀も適度でとても観やすいホールです。
中之島演劇祭は、一昨年にも開催されたのですが、
その時は、テントで開催され、リリパットアーミーⅡがハナを切っていました。
お芝居は、大阪の女と東京の男が結婚する事になり、
花嫁の父が、花婿の父と因縁があり、これを機に一計を案じ、
花嫁の母は、名古屋出身なのですが、自分の結婚の時に出来なかった
餅まきをやりたいと言い出したり・・・。
地方における結婚式の違いや、細かなギャグ満載のお芝居です。
美津乃あわさんのキャラと、野田晋市さんの歌が印象に残りました。
結婚式当日は、台風が来たのですが、
観に行った日は大雨で舞台上と同じでした。
罪と、罪なき罪 [芝居]
場所は、常小屋の弁天町・世界館です。
時は、明治。
士農工商がなくなって四民平等になり、
初めて食す牛鍋屋(すきやき)の流行、
巡査誕生と意識詿違条例(いしきかいいじょうれい、初めて聞きました)、
そして大津事件。
新時代の結婚のあり方や、自由民権などなど、
明治は日本の歴史上もっとも大きな革命の起きた時代といえます。
明治13年。
東京のあちこちに牛鍋屋が出来ました。
日本橋の牛鍋屋「いろは」で、吉川宗明、岸辺光太郎、岸辺春輔、中上川棋左衛門の
四人が牛鍋を食していました。彼らは北州社の弁護士です。
女の話で議論をし、会話が盛り上がっていると、「静かにしてくれたまえ」という声が。
司法省の判事、溝ノ内智明でした。
そんな幕開けで、舞台は始まります。
舞台は二転三転して、
明治24年、大津事件が起こります。
シベリア鉄道起工式に参列したロシア皇太子ニコライ・アルクサンドロヴィッチが、
警備中の巡査津田三蔵に刺され負傷しました。
時の松方内閣は、対露関係の悪化を恐れ法的処置として、犯人を死刑にすべしと要求しました。
これに対し大審院(最高裁)の院長児島惟謙らは、政府の干渉を退け普通謀殺未遂罪を適用し、
犯人を無期徒刑にしました。
以上は史実ですが、
その裏に隠された事実と、それに関わった人物がとった行動とは。
悲しい事実と結末に泣かされました。
お芝居が終わってからも、考えさせられる芝居でした。
今回は、客演が多く初めて観る役者さんも多かったです。
個性的な客演が多くて楽しかったです。
リリパットアーミーⅡならではの、笑いも含めて観応えのある舞台で、
改めて小劇団のパワーを感じました。
ラックシステム「お見合」 [芝居]
ラックシステムのお芝居「お見合」を観に行って来ました。
場所は弁天町の世界館です。
お話しは、
創業100年のミナミの料亭「前田」。お見合専用に使われる離れ「蕾の間」で
繰り広げられる人情劇です。
少し気の弱い社長「啓太郎」とその娘二人。長女が亡き母の後をついで女将に。
それを取り巻く丁稚、中居・・・お見合を世話する、中井のおばちゃん。
長女の女将が妊娠、前田の将来を考えた啓太郎の取った行動は。
廊下は、豆腐を作るときに出たお湯で拭くとツヤが出るとか、
細かい設定も感心しました。
今回のお芝居のもう一つの楽しみは、日替わりゲスト。
この日のゲストは、後藤ひろひとさん。
スイーツ(という言い方は嫌いですが)をテーマとしてお話しをします。
後藤さんは、見かけによらず?甘いもん嫌いで、
不二家のポップキャンディについてお話ししていました。
後藤さんは山形県出身で、山形の芋煮会のお話しが面白かったです。
ラックシステムとしては、笑いの多い芝居でしたが、最後に泣かされました。
家族ってええなぁという台詞が心に沁みました。
大阪芝居 [芝居]
リリパットアーミーⅡの「大阪芝居」を観に行ってきました。
タイトル通りの大阪が舞台となったお芝居です。
茨城県から研修のため大阪へやってきたサラリーマンが
大阪と茨城のギャップに悩んだりしながら芝居は進んでいきます。
大阪人の私としては、当たり前の事でも茨城からやってきた
彼には特異なことと感じることも多いようです。
甲子園球場の応援風景や、スナックでの一場面(ママさんが秀逸)では
大笑いしました。
最近は、大阪弁や大阪色もだんだんと薄れてきましたが、
ゑふさんの著書にもありますが「ぬくい」人が、
ぎょうさんあふれる大阪であってほしいです。
おおきに、ほなまた!!!
ラックシステム 「おたのしみ」 [芝居]
敗戦直後の大阪に乃木稔とゆう復員兵が中国から帰ってきます。
稔の実家は、印刷所です。
稔は昔から絵がうまく、画家を夢見ていました。
仕事がない稔のところへ、幼馴染の悪友が尋ねてきます。
仕事の話だったのですが、その仕事とゆうのが、
マッカーサー元帥のバースデーケーキの絵を描くとゆう仕事でした。
それがきっかけで、いろいろな人とのつながりや、
できごとが起こっていきます・・・。
文章にすると地味なお話しですし、
実際芝居も派手なものではありませんが、
しっかりと、したたかに生きてきた日本人や日系2世が描かれていて、
笑いと涙がありました。
人生、先になにがあるか分からへんから「おたのしみ」や。
小道具や髪型も昭和を再現していて、時代の変遷を感じました。
上演館が、弁天町の世界館とゆうところなのですが、
ここがまた雰囲気のある小屋で、ええところでした。